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Sampleレヴュー

 

■anti anti (2017年)

大理石をキャップとした3つ目の香りは、アンチのアンチ。つまり、反対するものたちへの反対の姿勢。それは、愛する人たちに敵対するものたちへの敵対意識でもある、と。反対するものたちへの反抗、それは自由を意味する・・・やっぱりパンキッシュなテーマですね。

トップ:ヘーゼルナッツ、ネロリ、レッドペッパー、カルダモン
ミドル:カカオ、オスマンサス、レザー、バーチ、ラブダナム
ベース:オークウッド、ベンゾイン、ベチバー、サンダルウッド、シダーウッド、ムスク

第一印象は、Mark Buxtonさんらしくない調香だというものでした。彼の調香は合成香料が多めで透明感のある香りが多いのですが、こちらはスパイスがナッツとカカオと重なり、スパイシーウッディなオリエンタルとなっていくあたり、どちらかというとBertrand Duchaufourさん風なのです。トップで香ったナッツ感とカカオはグルマンに流れず、スパイス様に弾けた後、硬質なアンバーウッディへと変化していくのです。全体的にはレザーもオスマンサスも強くはなく、ベンゾインやオークの渋みも少なく、Terre d'Hermesに少しハニーノートを足したような雰囲気になっていくのですが、トップからミドルの流れがとてもユニークで、そこだけを楽しむために何度もプッシュしてしまうほど。とても洗練されたユニセックスさで楽しませてくれます。(12/06/2017)


■Concrete Flower (2014年)

壁の落書きへのオマージュ。植物は、コンクリートを打ち砕いて発芽するほどのパワーを持っている、と。だから、香りも突き抜けるようなパワーを秘めた香りに。もともとは、Be a concrete flowerと描かれた壁の落書きにインスパイアされたもののようですが、その壁の落書きがベルリンの壁を思い起こさせます。花になって、壁を突き破れというイメージでしょうか。もちろんキャップはコンクリートをイメージしたものとなっていますし、タイトルはこの壁の落書きのフォントがそのまま使用されています。

 

 

トップ:ジンジャー、ベルガモット、タンジェリン、ブラックペッパー、タイム、セージ、カルダモン
ミドル:ネロリ、ジンジャー、ジャスミン、アイリス、クローヴ、リリー
ベース:スティラックス、サンダルウッド、シダーウッド、オークモス、アンバーグリス、ムスク

調香からもわかる通り、スパイスとハーブで幕開けします。結構しっかりとキーノートになっているのがジンジャーで、精油のジンジャーの香り、土っぽい部分、搾り汁っぽい部分が持続をしています。その上にアロマティックなリナロール系の香りが重なっていて、フローラルというほどではないものの、ジンジャーの土っぽい部分がウッディノートとキレイに重なり、少し透明感を感じるエッセンスと共に肌に残ります。コンクリートを打ち破る衝撃をジンジャーで、砕けたコンクリートをウッディノートとモスなどで表現した、甘さのない、甘えのないキリリとしたクールなまとまりです。(12/06/2017)


■Dreckig Bleiben (2013年)

ドイツ語でStay dirty、つまり汚れたままだというタイトル。親友とワインを飲むキャンプファイヤーの夜。着飾るようなものは何もなく、裸足にラフな格好でいるだけ。でも、それが自分なのだと。自分らしさというのは、着飾るものを取り外した時に現れるということなのでしょう。そして私はまだ薄汚れている、と。

この香りを作るきっかけになったのは、2002年にハンブルクで起こった、トレーラーハウスに住む住人たちを排除したという事件でした。違法に駐車されたトレーラーハウスを住宅とは見なさない、というもので、立ち退きを余儀なくされたものたちによるデモは歌になり、ドキュメンタリーとなって社会現象を引き起こしたのだそう。

 

 

なんと、Stefanie Mayrはそのトレーラー生活をしていた方なのです。今でこそ自分自身を着飾るファッションブランドを展開していますが、このデモの時のスローガンとなった言葉Dreckig Bleibenを胸に刻んで生きているのでしょう。

 

 

トップ:スモーキーノート、ベルガモット、ネロリ、タンジェリン、ジンジャー
ミドル:ラブダナム、ガジュンバルサム、エレミ、アミリスウッド
ベース:シダーウッド、ガイヤックウッド、サンダルウッド、バニラ

Mark Buxton氏は、ウッディノートにスモーキーノート、そしてダークにならないようにシトラスをたっぷりと使用して香りを形作りました。パッとスモーキーさが飛び出しますが、それらはすぐに大量のシトラスに包まれ、次の瞬間には金属的にも感じられるウッディノートへと変化していきます。合成香料をメインにしている彼らしい調香で、ラブダナムは強くはなく、スモーキーなガイヤックウッドをメインとしたウッディノートが広がります。それらを少しずつ彩っているのが甘さ、スモーキーさ、シトラスの残り香などなのです。タール系のスモーキーさではなく、感じられるのはスパイシーにも感じられるガイヤックウッド系のスモーキーさですので、どっしりと力強いメンズっぽいものではありません。あまりオリエンタルではない、どちらかというとドラスなアンバーウッディ系の香りがお好きな人に良さそうですよ。とてもユニセックスなまとまりです。

この香りをレヴューすることで、2002年に起こった事件を知ったわけですが、彼女にとってはそれだけでこの香りは成功なのかもしれません。とてもパンクなテーマですから(09/06/2017)

 

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