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Sampleレヴュー

 

■Acrasia (2023年)

16世紀の詩人エドマンド・スペンサーの代表作The Faerie Queen(妖精の女王)をテーマとした香り。タイトルは古代ギリシア語で意思の弱さを意味する言葉。悪いことだと自覚しつつも止められないということで、The Faerie Queenの第二巻に魔女として登場しています。アーサー王の伝説になぞらえて、様々な悪と戦う騎士が描かれた叙事詩で、意に反して男性を誘惑し、獣に変えてしまう魔女として描かれています。神聖、節制、貞節、友情、正義、礼節の6つの美徳の中の節制のストーリー。

 

 

トップ:レモン、ワイン、ベルガモット
ミドル:シナモン、フランキンセンス、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン
ベース:アンバー、バニラ、ムスク、パチョリ、ベチバー、シダーウッド

Rose is a rose is a rose is a rose (ローズはローズであって、ローズ以外の何物でもない)という有名な言葉があるのですが、オフィシャルにはA rose is a rose is not a rose、ローズはローズだがローズではない。と記載されています。それはつまりこの香りが、通常のローズではないことを暗示しているのですが、ワインというよりもフルーティーなエーテルが弾けて始まり、少しグリーンのローズ調の香りにフランキンセンスが重なって広がっていきます。ワインがあるのは、叙事詩の中にそうしたシーンがあるからのようで、香りはやがてメタリックなローズの香り(ローズオキサイド)とフランキンセンスが感じられるフローラルウッディムスクへと変化していきます。ひょっとしたらメタリックなローズの部分は血液をイメージして配されたのかな。とても個性的ですが、使いにくい個性ではありません。(12/06/2023)


■Fathom V (2016年)

シャークスピアのThe Tempestの中で登場するアリエルの歌。

Full fathom five thy Father lies,
Of his bones are Corrall made:
Those are pearles that were his eyes,
Nothing of him that doth fade,
But doth suffer a Sea-change
Into something rich and strange

(海深くに眠る父、骨は珊瑚に、瞳は真珠になった。その身は朽ち果てず、海は全てを変えていき、不思議で貴重な宝となった。)

この歌の中に登場する5尋という単位がタイトルとなりました。1尋は約6フィート、つまり11メートル。海が全てを変えていくというフレーズから、島国であり、常に海と関わってきたイギリスを表現したそうです。

 

 

トップ:ジュニパーベリー、タンジェリン、ブラックカラント、グリーンノート、アーシーノート
ミドル:タイム、リリー、ジャスミン、イランイラン、ジンジャー、クミン、ブラックペッパー、ミモザ
ベース:パチョリ、ベチバー、オークモス、ソルト、フランキンセンス、アトラスシダーウッド、アンバー

これまたとても一筋縄にはいかない香りで、トップではリンデンブロッサムとジャスミンをグリーンノートでまとめたようなグリーンフローラルで始まります。かなりグリーンが強いのですが、その奥にはクミンが香っているのです。暗い海の底を表現した香りではなく、どことなく物憂げな鬱蒼とした森のようなイメージに感じるのはベースがシプレだからなのかもしれません。このグリーンの香り方に好き嫌いは分かれるかもしれませんが、クセになる人もいるのではないかと。(26/10/2016)


■Lignum Vitae (2016年)

何故、ガイヤックウッドがタイトルになったのか。18世紀に時計技師が、航海中の船の経度を測定するために作られた精巧な時計、マリン・クロノメーターを世界で初めて作った際、ガイヤックウッドが使用されたのだそう。油分が染み出て樹木を守ることから、スクリューシャフトのベアリングやギアなどにも使用されていたのだそう。

 

 

トップ:ブラックペッパー、レッドベリー、マンダリン、ケーキアコード、マリンノート、マンダリン、レモン、ベルガモット、ジュニパー、ジンジャー、ライム、フランキンセンス、カラメルノート
ミドル:ガイヤックウッドアコード、ガイヤックウッド、ベチバー、ウード
ベース:サンドアコード、シーソルトアコード、アンバー、フランキンセンス、モス、ムスク、バニラ

トップで弾けるのはなんとチョコクッキーの香ばしい香りでした。カカオのスパイシーな部分にナッツを混ぜたような香りが広がり、すぐにその中からアロマティックな香りやシトラスが現れるのです。この香りがグルマンで終わらないのは、どっしりとしたウッディノートがベースにあるからで、マリンノートはトップの香ばしい香りが薄れた後で登場するのですが、ウッディノートを少し明るく感じさせる程度でマリンフレグランスのようなパワーはありません。漢方薬のようにも感じるスモーキーなガイヤックウッドを香ばしくしまとめたとてもユニークな香りです。(26/10/2016)


■Vi Et Armis (2016年)

暴力と武器を以て・・・というタイトルの香りのテーマはイギリスではとても有名な戦艦キングジョージ。国王が即位した直後に完成したということで名付けられたのだそう。彼の言葉として「お茶、アヘン(オピウム)、ウイスキーと宗教が男たちに興奮をもたらした」というのがあるそうで、それを引用しています。

 

 

トップ:カルダモン、ブラックペッパー、ティーリーフ
ミドル:ウイスキー、フランキンセンス、オピウム
ベース:タバコ、バーチ、ウード

Coeur de Noirと1805 Tonnerreに続いてこちらもバーチタールのスモーキーな香りが特徴的に使用されています。特にこちらは、タバコやウッディノート以外にお茶系が加わったことで、中国のラプサンスーチョンティーのようなニュアンスに感じられるのです。これならば、少しタールが強くてメンズっぽくはありますが、女性の方でも使えるのかな、といったところ。ただやはりトップのタール香が薄れてから家を出られた方が良いのではないかと・・・。男性であればとてもクールにフィットすると思います。個性的で刺激的、楽しい1本になると思いますよ。(26/10/2016)


■1805 Tonnerre (2016年)

Tonnerreとはフランス語で嵐の意味。テーマはネルソンが勝利した有名なトラファルガーの海戦です。この戦いでBeaufortは風力スケールを導入したとされており、勝因は嵐の中の風を読んだことだと。そうした海上の戦の様子をイメージさせる香りたちが組み込まれています。※発売当初のタイトルは1805でした。

 

 

トップ:ライム、スモークーノート、ガンパウダー
ミドル:ブラッドアコード、ブランデー、シースプレー
ベース:アンバー、ファーバルサム、シダーウッド

Coeur de Noirにも使われている木タールを、更にダークに甘苦いファーバルサムでまとめたもの。それだけではなく、なんとその中にマリンノートがあるのです。塩バニラのように一見相反するもののようで、バラスが良ければそれはそれでありだとわかる調香なのですが、やはりどうしてもタール香が強いため、男性的です。とにかくスモーキーな香りがお好きな方向けでしょうね。香水としては入れすぎなほどで、焚火の近くにいるような錯覚に陥るほど。ブラッドアコードやブランデーの部分をもう少し楽しみたいところなのですが、全てがタールに追いやられてしまっています。それでもタールが好きであれば間違いのない1本でしょう。ある意味チャレンジですよ、これは。(25/10/2016)


■Coeur de Noir (2016年)

黒色。何の色なのかというとヨットの図面を書くインクの色。古い図書館にあった航海図とタトゥー(共にインクを使います)、そして古紙を表現するためにインドのラムを、革の装丁本ということでタバコやレザーを、タールと共に合わせたというもの。

 

 

トップ:ラム、ジンジャー、インク
ミドル:ペーパー、レザー、バニラ
ベース:シダーウッド、タバコ、バーチタール

しっかりとバーチタールの香る、スモーキーなタバコウッディが軸にあります。タールとは白樺の樹皮を燃やした時に出る木タールの香料で、実際に樹木が燃えているような香りがするのが特徴です。それを薄く利用することでレザーの代用品とするのですが、こちらはそれをトップで効果的に使用しています。それだけではなく、少しメタリックにも感じるアンバーウッディノートがあり、それがインクっぽい雰囲気を増長されているように感じますね。とてもダークでスモーキーな系統ではあるのですが、クラシカルなイソブチルキノリンのような合成香料のレザーノートも使って全体的には重くならないようにしてあり、1805 Tonnerreを香った後では可愛らしく感じるほどのスモーキーさ。トップのタールが少し女性では難しいかもしれませんが、男性ならばとてもクールにフィットすると思います。ミドル以降のレザー感はBanditタイプですので、好きな人はたまらなく好きなタイプだと思います。(25/10/2016)

 

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