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Sampleレヴュー

 

 

■Belle Rives (2017年)

9月のローザンヌ、8:45。夏の終わりの柔らかな光がロビーを彩る時間。そこは、アルバート・コーエンがBelle de Seigneur(選ばれし女)を書いた湖畔の五つ星ホテル、Beau-Rivage Palace。

 

 

トップ:ベルガモット、フランキンセンス、ミルラ
ミドル:アイリス、オスマンサス、サンバックジャスミン
ベース:テキサスシダーウッド、ベチバー、コスモン

ムエットで試した際、際立ってアイリスが美しい香りだと思いました。それは肌に乗せてみても変わらず、トップでアイリスが勢い良く弾けます。パッと散ったアイリスはムスクに包まれてパウダリーさから柔らかさへと変化し、ウッディノートを従えて肌にそっと馴染んで消えていくのですが、柔らかな光をアイリスを軸にして組み立てるというのは異例のこと。もちろん脇役として使われることは多いと思いますが、主役なのですから。全てのエッセンスがアイリスを盛り立て、わずかながらのアクセントを添える脇役たちに徹していて、オスマンサスの部分も生花らしさはありません。アイリスをメインとした香水には様々な形がありますが、どれも一様にシックで上品です。こちらも、やはり五つ星ホテルで過ごすひと時を、心に余裕のある姿として表現したのではないでしょうか。(17/10/2017)


■Annees Folles (2015年)

地中海を見下ろす壮大なホテルの窓を開け、夜明けまで香りを楽しむ。19世紀後半から20世紀初頭のアメリカの黄金時代をイメージした香り。テーブルに散らばっているのはクミンやアニスかと思ったらラベンダーだったんですね。

 

 

トップ:ラベンダー、タイム、ナツメグ
ミドル:ラベンダー、ゼラニウム、ベチバー
ベース:ラベンダー、アンバーグリス、トンカビーン、ベンゾイン、パチョリ

地中海を見下ろす高台と言えば南仏。南仏と言えばラベンダーというような連想ゲームのような調香。香りはクラシックなアンバーラベンダーを軸にハーブやスパイスでメンズライクに仕立てたもので、バルコニーのチェアで葉巻でも加えながら海を見つめるようなダンディな姿が浮かびます。決して目新しいユニークさはありませんが、時代に流されない良さがあるのが定番中の定番であるアンバーラベンダー。安心して使えるシックなメンズフレグランスです。(17/10/2017)


■No Sport (2013年)

ロンドンのベルリッツホテルに長く住んでいたウィンストンチャーチル。そのバルコニーから眺めるハイドパークの眺めがテーマ。

トップ:ベルガモット、ガルバナム
ミドル:ローズ、ゼラニウム、ピンクペッパー、クローヴ
ベース:ローズ、トンカビーン、サンダルウッド、リアトリクス

グリーンを生かしたメンズっぽいテイストを感じるフゼアの一歩手前なユニセックス。日本人はこの香りが一番好きだと言うんだ、と不思議そうに語って下さいましたが、資生堂の商品に通じる部分があるのではないかと。よく考えてみたら、資生堂はローズのラインがたくさんありますからね。時間と共にどんどんメンズっぽさが薄れ、アロマティックなローズ調の渋めなウッディムスクとへ変化して消えていきます。スポーツタイプの香りではない、けれどもどこかそういう雰囲気を残したメンズライクなユニセックスといったところ。ローズをダンディにドレスアップした、というテーマがダイレクトに伝わっていきます。(16/10/2017)


■Desarmant (2013年)

ネオバロックの高級ホテルで見つけた古い香水瓶。誰がそこに残したのかわからないけど、とてもステキなライラックの香りがしていた。

 

 

トップ:オレンジ
ミドル:ライラック、シナモン、スティラックス、イランイラン、ローズ
ベース:オスマンサス、バニラ、ベンゾイン

調香にはいろいろと記載がありますが、ざっくりとですが、発売当初のムエットでの印象は典型的なライラック香でした。改めてサンプルから香ってみても、やはり美しいライラックが中心に存在しています。この香水は、調香の全てで美しいライラックを表現したもので、生花と違う部分は最後にバニラの甘さが残っているくらいでしょうか。生花らしさを感じられますし、何よりも華やか過ぎず、主張も大きくはなく、ひっそりとそこに咲いているような控えめな香り方がシックで、優雅なフローラルが静かに肌の上で広がっていきます。古い香水瓶のライラックであれば、もっとクラシカルでも良かったのかな、とは思いますが、実際の1900年代の香水たちはシングルノートも多かったわけで、生花を抱いているような雰囲気というのがエレガントだったのだと思います。これは、そういう視点でありなライラックの形。

どうして最初の3つの香りのうちの1つがローズでもジャスミンでもなく、ライラックだったのか。それは、彼がヴァカンスを過ごしていたロイヤルピカデリーのスイートルームで香水瓶を見つけたことが発端です。そこには美しい香水瓶にライラックの香りが残っており、両親にその話をすると、長らくそのスイートルームに宿泊していたインド人女性のものではないかというのです。大人になった彼はインドに飛び、その方を探したのですが、一歩違いでその女性は亡くなられていました。持ち主の見つからない、でもそうだったかもしれない香りへのオマージュなんですね。(16/10/2017)


■Cuir X (2013年)

テュイルリー宮の反対側にある高級ホテルのバーで、革張りのソファーに沈みながらウイスキーを飲むひと時。そこは、多くの権力者たち、愛人たちが通り過ぎて行った場所。

トップ:タンジェリン、エレミ
ミドル:ジャスミン、アイリス、サフラン
ベース:トンカビーン、バニラ、スティラックス、ラブダナム

ムエットで香った際には、良くある軽やかなレザーだったのですが、肌に乗せると少しずつ様々なエッセンスたちがレザーを彩っていることがわかります。まず、アイリスとジャスミン、そして次にクマリンとスティラックスの甘さ。基本的にはレザーなのですが全く重くなく、結構サフランが効いているのが特徴で、全てをサフランのヴェールが優しく包み込んでいます。スモーキーなタール系のレザーではなく、オリエンタルでアニマリックなカストリウム系でもなく、フローラルを生かしたものでもなく、ただただ、柔らかで品の良いレザーに焦点を当てた香りです。(16/10/2017)

 

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