初めて見た時、これぞ一目惚れというボトルでした。香りも素晴らしいのですが、ボトルが凄いのです。このシリーズは石を薄く削るという新技術を使い、紙のように薄く削った石そのものがボトルを彩っているのです。

■Coeur de Oud (2016年)

当初、15%のEdPで制作をしたところ、アニマルノートばかりが際立ってしまったのに、30%にしてみたところパチョリとウッディノートが浮き上がって驚き、これは30%にしようと決めたのだそう。そうして生まれた3つのExtrait de Parfum。

トップ、ミドル:シダーウッド、ミルラ、アニマルノート、レザー
ベース:サンダルウッド、バニラ、パチョリ、ムスク

展示会では、思わず声を出してしまうほどアニマリックで、ジャーナリストの友人たちと顔を見合わせて笑ってしまったのですが、肌に乗せてみると案外使えるアニマルノートでした。トップこそアニマリックですが、ウードの天然香料を使用せずウードらしさを出すにはこうしたアニマルノートが不可欠です。カストリウムとシベットだと思うのですが、このカストリウムはナチュラルなのではないかと・・・。2回、3回と使うごとにアニマルノートに慣れ、心地良くなってくる様子は中毒症状のよう。トップのアニマルノートの余韻を感じるミドルでは確かにウッディノートが強まり、ウードらしいテイストへと変化していきますので、リアルなウードがお好きな方には良さそうです。天然のウードは取り合いせず、イスラムの方たちに差し上げて、香水は合成でこんなにステキな香りが作れるのだから、それで楽しみましょうよ、と言いたい香り。(08/05/2017)


■Coeur de Rose (2016年)

18歳までモロッコで育ったフィリップにとって、モロッコは特別な場所。それは日本人でも同じことですが、彼は砂漠のバラをテーマにこちらを作ったそうです。砂漠の民ベドウィン族の人たちは、海での旅の途中で夜になると鉄製のティーポットにドライローズを入れて紅茶を作るそう。だから、海辺のイメージとしてアンバーグリスを、鉄のイメージの香料、アフリカンストーンというアニマル香料などを使用して、ドライなローズを表現したのだそうです。調香は全て同じくJean Claude Gigodotで、展示会では石がバラのように結晶化して作られた自然の砂漠のバラと共に展示されていました。

トップ:ベルガモット、ネロリ
ミドル:ローズ、ピンクペッパー、アイリス、イランイラン
ベース:シダーウッド、ヘイ、ムスク、バニラ、パチョリ

え? 間違えた? と疑ったほど、ローズがどこにも見当たりませんでした。2度、3度と使うごとにローズがいることを感じられるようになったのですが、香りはとてもシックで渋いスパイシーなフロリエンタルで、ナツメグのようなスパイスが印象的なのですが、これはスパイスではなくアンバーグリスノートやアンバーウッディノートの香料だと思います。随分ドライでスパイシーなアンバーウッディというよりもアンバーグリスローズです。(08/05/2017)


■Coeur de Musc (2016年)

Marrakeshの旧市街にある一番有名な広場、Jemaa el Fnaをテーマとした香り。彼にとって18歳まで過ごしたモロッコの思い出は青春そのものであり、自分のために作り出した広場の香りだそう。街へ出かけるための馬をレンタルしたり、屋台で花や食べ物を買ったり、大道芸人や様々な見世物を見たりする喧騒の場所。Jemaa el Fnaとは死者たちの広場と言う意味で、昔は処刑場だったのだそうです。

トップ、ミドル:アニマルノート、ハニー、アンバー
ベース:ムスク、アンバーグリス

ハチミツ売りが有名なのか、ハニーノートを組み込んでいますが、基本的にはアニマリックなムスクです。ハニームスクだというほどハニーノートは強くないのですが、ランドリー系ではなく厚みを増すには必要なハニーで、もわもわと肌の上で香り続けるアニマリックなムスクにクラクラとめまいが。ムエットではCoeur de Oudがダントツでアニマリックで、誰もがその威力に圧倒されていたのですが、肌の上ではこちらの方がアニマリックで、じわじわと香り続けるという点でパワフルです。それでも使いにくいほどではありませんのでご安心を。ただ香りは言うなれば穢れたムスクで、満月が出番というような香り。(08/05/2017)