2013年発売の最初の香りのうちの1つで、「日本人に紹介したい香り」として彼が選んでくれたものはバルサムとミルラの香りでした。化石化して黒ずんだ加工していないいわば宝石の原石・・・それをイメージした香りをボトルの中に閉じ込めました。彼にとっては、原石に対するトリビュート(賛辞)なのだとか。それを表現するのに彼が使用したのはミルラ、トンカビーン、レザー、バーム(樹脂)という4つのエッセンスでした。

どっしりと重いブラックボトルから溢れ出てくるのは、濃厚なまでのスイートミルラです。トップが1番甘さがあり、付けた瞬間にファーバルサムのような香りがスパークします。その甘さがスッと引いていくと、今度はその中から柔らかなレザーノートに包まれたミルラが登場するのです。レザーの香りはスモーキーでワイルドなものではなく、どちらかというとラム皮のようなしなやかさと柔らかさを感じさせる香りとなっていて、ミルラのもつ香ばしい部分わ和らげてくれています。ミルラを大切に包み込んでいる感じなのですが、他の樹脂香は甘さを少しもったものを使用しているようで、ミルラがオポポナックス(ベースではなく樹脂そのものの香り)のような香り方をしているのが特徴です。そう、ミルラは少しスイートノートと合わせた方が使いやすくセクシーとなるのです。この香りの中に使われているトンカビーンはCoumarinではなくトンカビーンアブソリュートなのかもしれません。その方がスモーキーでこの香りには合っていますから。

パシャパシャと気軽に使う香りではなく、出かける前にブラックジェムストーンのアクセサリーを身に付けるように少し肌に乗せる、というのが素敵なのではないでしょうか。

(25/03/2013)