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Sampleレヴュー

 

 

■Click Song (2021年)

Une Nuit au Capというラインの最初の香り。Mama Afrikaと呼ばれているMiriam Makebaという南アフリカの歌手がいテーマに。アパルトヘイトに尽力した女性歌手で、そのために亡命を余儀なくされ、31年間親戚の家を転々とし、世界中でズールー語、コーサ語、ツワナ語、スワヒリ語、アラビア語、英語のミックスで歌い、訴え、1960年代にグラミー賞を受賞した方、彼女が母国に戻れたのはネルソンマンデラの力のおかげで、90年代なってからのことだったそう。コーサ語のQongqothwane (The Click Song)という曲が彼女の代表曲のため、それがタイトルに。曲は今でも若い世代に引き継がれ歌われています。調香はSerge de Oliveiraです。

 

 

 

トップ:ベルガモット、ゼラニウム
ミドル:ローズ、パチョリ
ベース:シダーウッド、アンバー、ラブダナム、バニラ、ベンゾイン

力強い黒人女性をアンバーローズで表現した香りだと思っていたら、ローズは控えめでバランスとしてはパチョリが強めのアンバーで始まりました。いえ、確かにローズは香っているのですが、パチョリとアンバーのアクセントに留まっているのです。フェミニンではなくクールなスタイルを描きたかったのでしょう。パチョリのカンファー香が落ち着くと、少しパウダリーなアンバーノートへと変化して落ち着きます。Ambre Khandjarがタイトルにアンバーがありながら変化球的だったのに対し、こちらの方がアンバーに相応しい香りです。(22/09/2022)


■Nothing but Sea and Sky (2020年)

Une Nuit a Montauk4つ目の香りです。テーマは雪のモントーク。海と空以外何もない。それはWalt Whitmanが書いた詩集Leaves of Grassの中の言葉から。

トップ:ベルガモット
ミドル:オーストラリアンサンダルウッド
ベース:ホワイトムスク

もう、調香の3つがすべてなのではないでしょうか。ベルガモットがサンダルウッドと共に広がるのですから。それ以外の何もない潔いほどのシンプルさで、タイトルとなっている海と空以外の何もない様子を、すべて雪の白に置き換えて表現したのかもしれません。白い香りをホワイトフローラルではなくサンダルウッドとムスクで表現したのがユニークなポイントで、おそらく海や空をサンダルウッドから感じることはなかなかないことと思います。マリンノートなし、オゾンノートなし、そこにあるのはベルガモット、サンダルウッドとムスクだけ、という香り。(22/09/2022)


■Ambre Khandjar (2020年)

2つ目のUne Nuit a Omanは前作に続いてJerome Di Marinoによる調香で、Jの形をした短剣のKhandjarがタイトルに。中東で最も古い都市であるオマーンのマスカットの中心部にあるスークをテーマとした香り。

トップ:マンダリン、ブラックプラム
ミドル:ラブダナム、バニラ、アイリス、イランイラン
ベース:サンダルウッド、パチョリ、ベンゾイン

アンバーでしょう? と軽く捉えていたら衝撃を受けるラブダナムで始まります。ダークでスモーキーな、そして少しアニマリックなトーンをも持つラブダナムの香りは、ベースで支えるオリエンタルノートの役割であり、アンバーノートの中に多少使われる強い香りなのですが、それを中心に配置してメインにしてしまったという香り。ラブダナムの中の甘さが少し控えめで、そこをバニラとベンゾインで補填することでアンバーになるわけですが、イランイランはそれとわかるほど強くはなく、フローラルノートもフルーツもわからないほど、ラブダナムを中心としたアンバーノート一色です。中東の短剣は自由人としての誇りであり、名誉剥奪の際には刑として没収されるほど大切なもの。これくらいガツンとした香りの方が決意表明のようでイメージには会うのかもしれません。ガツンと強くスタートしますが、重すぎないようにバランスがとられていますので、安心して肌に乗せられます。(21/09/2022)


■Jardins de Misfah (2019年)

Une Nuit a Omanの最初の香りだそう。Misfah Al Abreyeenという砂漠のオアシスをテーマとした香り。

トップ:カルダモン、ナツメグ
ミドル:デーツアコード、ローズ、ローズアブソリュート
ベース:サフラン、アーモンド

サフランとアーモンドの効いたローズのスイーツのような香り。中東のスイーツは暑さで奪われる体力を補填するかのようにこってりと甘いものが多いのですが、それを考えると比較的あっさりとしたハニーノートの香りで、スパイシーなハニーローズを軸にベースノートの少ない軽やかなフローラルが広がっていくのです。オアシスで過ごす休日のようなとても穏やかで美しい香りで、しっかりとローズがあるのに、ローズらしさを少し控えめに広がるあたりがとてもユニセックスです。(21/09/2022)

 

 

■Bohemian Soul (2018年)

1966年に放映されたEndless Summerという二人のサーファーのドキュメンタリー映画にインスパイアされたもの。世界中を飛び回るとという言葉のJet Setterとジプシーを合わせたジプセットということばが生まれた頃で、カリフォルニアの夏が終わった後は、南半球のオーストラリア、タヒチ、アフリカへと移動してサーフィンを楽しむという夏を求めて世界中を移動するわけです。大好きな波を追いかけて生活していくという、言わば理想の生活スタイル。それが夏だというのもまたカッコいいじゃないですか。

 

 

トップ:アルテミジア、フランキンセンス
ミドル:ガイヤックウッド、アイリス、ミルラ
ベース:ムスク、サンダルウッド

サーファーというとマリンノートが、ジプシーというとパチョリが定番ですが、この香りはそのどちらをも使用せず、アロマティックなアイリスにウッディムスクを重ねて表現しています。肌に乗せた瞬間はアルテミジアのアロマティックなアニスノートが弾け、次の瞬間にアイリスへと切り替わります。ガイヤックウッドのスモーキーな部分は強くなく、柔らかなサンダルウッドのおが屑香をアイリスとムスクで包み込んだような香りとなって肌に馴染んでいくのです。パチョリもマリンノートもないため、ダイレクトではないのですが、ドキュメンタリー映画を観るとどうしてこのような調香でまとめられたのか、納得のできるヒントがあるかもしれません。瞑想とか禅に通じるようなとても穏やかなウッディムスクですので、主張してスパークするような香りではありません。イメージ画のように海辺でリラックスするサーフ後のひと時の香りなのでしょうか。(14/05/2018)


■Rose America (2017年)

サンテグジュペリのThe Little Princeにインスパイアされた香りで、調香はAnnick Menardoが担当。

 

 

トップ:ラズベリー、マリンノート
ミドル:ローズ、カーネーション
ベース:ヘリオトロープ、アンブレットシード

このテーマで作られた香りはいくつかありますが、ふるさとの星のローズが印象的ですので、ローズ系になるのは納得です。でも、マリンノートを合わせることでどうなっていくのか、普通のマリンローズであれば面白みがありませんよね。フルーティーフローラルマリンという可愛らしいテイストなのかと想像をしていたら、マリンフローラルで始まるものの、マリンの要素は早々に駆け足で通り過ぎ、ゼラニウムっぽいローズへと変化し、そこからムスクとヘリオトロープのスイートムスクに包まれていきます。残り香はパウダリームスキーなゼラニウムで、マリンフローラルではありません。このローズ、なんと日本で有名なRosa Rugosa、つまりハマナスをイメージして作られたのだそう。海岸で海風に揺れながら咲くその姿を表現したからこそ、飛沫のようなマリンノートがトップを飾っているのです。このハマナス、ニューヨーク州のロングアイランドの先にあるモントークの浜辺に咲いているそうですよ。ファンシーで可愛らしいローズではなく、どこか野性味を感じるグリーンのローズが、スイートムスクに包まれて優しく肌に残ります。(19/02/2018)


■Murmure des Dieux (2016年)

タイトルは神の声みたいな意味で、肌の上のマントラを香りにしたそう。ゆっくりと時間の流れるバリでは、生きていること自体に感謝の気持ちが芽生えるそうで、バナナの葉で作られたバスケットに色とりどりの南国の花、スパイス、お米、聖水などを入れた・・・という雰囲気を調香に生かしたもの。

 

 

プルメリア、ライス、スターアニス、ムスク、フランキンセンス、ホーリーウォーター

タイのジャスミンライスの雰囲気がスイートフローラルに重なるというとてもユニークな香りです。時間と共にどんどんジャスミンライスの中の香ばしい部分が強く前に出てくるようになり、プルメリアが押しのけられて柔らかな、でもグルマンというほどこってりとはしていないライスムスクが肌の上で溶けて広がっていきます。ピンクの液体からは想像しづらい香りですが、ジャスミンライスの香ばしい部分はそこまで長く持続をせず、アニス調の甘さとムスクへと切り替わりますので、一瞬トップからミドルで驚きますが、ラストノートは肌馴染の良い香りになりますのでご安心を。(27/04/2016)


■Mr. Vetiver (2015年)

日に焼けた褐色の肌、白いシャツに古びたタトゥー。オランダ製の自転車に乗っている背の高い男性。バリに住む人々の中から、特定のイメージを切り取ったもの。そう、名付けてミスターベチバー。

 

 

トップ:カルダモン、グレープフルーツ、ライム、バジル、タラゴン
ミドル:ゼラニウム
ベース:ベチバー、ピリピリ、アンバーウッディ、モス

これはかなり精油感の強いスパイシーウッディです。トップでこそシトラスがあったものの、シトラスより目立つのがカルダモンで、カルダモンとベチバーがトップで弾けます。あれ? ゼラニウムは? というほどカルダモンとベチバーの印象が強いのですが、香りは次第に甘いモス調の香りを従えてパチョリを使わないシプレウッディへと変化して消えていきます。メンズと言えばメンズテイストの香りなのですが、フゼアではありませんので、ユニセックスで使えるかもしれません。精油のみではありませんので、ベースのバランスも安定しています。(21/05/2015)


■Suma Oriental (2015年)

1938年にCotyが作り出したA SUMEという香りがあるのですが、それにインスパイアされて作り出した香り。16世紀に中国大使となったTome Piresというポルトガル人の著書により、サンダルウッドの起源はインドネシアだったと判明。バリのビーチを照らす月明かりをウッディノートとパチョリで表現したもの。

 

 

トップ:シプリオール、ラム、ココア
ミドル:パチョリ
ベース:サンダルウッド、トンカビーン、カシミアウッド、ガイヤックウッド、クリアウッド、ムスク

香りはとてもユニセックスで、ココアとパチョリという愛称の良い組み合わせにトップでダークなウッディノートのシプリオールを、ベースにはクマリンを配置し、甘く少しパウダリーなオリエンタルノートをサンダルウッドでまとめた、という香りです。クリアウッドという最新の香料も使用していますが、香り自体はちょっとリキュールっぽいカカオにパチョリとサンダルウッドを重ねてオリエンタルにした、という感じでシンプルにまとまっています。付けた瞬間から消え入る最後まで、オリエンタルな香り、特にパチョリとココアの組み合わせがお好きな方に良さそうです。思い切って真夏に使ってみるのも良いのかもしれませんよ。炎天下のバンコクでは艶やかに香っていますから。(21/05/2015)


■Fleur des Fleurs (2013年)

Karine Chevallierによる調香で、タイトルはボトルチェンジを機にUne nuit a Bali Le parfum No.1からFleur des Fleursとなりました。

 

 

トップ:ベルガモット、グレープフルーツ、サフラン
ミドル:イランイラン、チュベローズ、インディアンジャスミン、ウィステリア
ベース:ウード、サンダルウッド、ベンゾイン、アンバー、バニラ

ほぼほぼ精油で組める調香ですが、香りは精油だけではなく調合香料も使用しているようです。精油感はあまりなく、チュベローズとジャスミンの甘やかなグリーミーフローラルが南国らしく香り、夏っぽいテイストを感じさせてくれます。南国の花々はこうでなくっちゃ、という典型なのですが、通りすがりに香るとやはりどれも素敵なもの。天然香料の深味や厚みはありませんが、たっぷりとプッシュして陽気な街中を颯爽と歩く、そんなイメージです。香り自体は軽やかですので、数プッシュしても気にならない感じですよ。執筆中のスリランカでは、とても風、空気に合う香りです。(20/05/2015)

 

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