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樹木化しているJasminum grandiflorum

 

■スパイスの国、スリランカ

東南アジア、特にマレーシア、インドネシア等はスパイス産業も盛んですから、そちらでも見られることでしょう。また、島国であればタンザニアの横にあるザンジバルもスパイスの島として有名で、ツアーも組まれています。しかし、観光を含めるとスリランカが楽しいのではないかと思うのです。このスリランカ、地域的には高原のキャンディ近郊にあるマータレーという町にスパイスガーデンがたくさん存在します。スパイスガーデンは、観光客のツアー用に敷地内にスパイスを各種植え、育て、そこでアーユルヴェーダの説明をしながら、スパイスとアーユルヴェーダ関連の商品を販売する、という観光施設です。ガイドもたくさんある施設の中から契約をし、観光客を案内することでキックバックを得るというスタイルで、ガイドごとに施設が違うのも大きなポイント。だって、良いところばかりとは限らないわけですから。今回訪れたのは2ヶ所ですが、そのうち良かったのはIsiwara Ayurvedic Villageという施設でした。

何故なら、日本語ガイドがいるから。(毎日いるかわかりません) 僕は最初、日本人だと思われていなかったのか英語ガイドでした。でも、途中で日本人ガイドに交代をしてお話を聞くことが出来ました。彼はアーユルヴェーダの先生であり、大学で日本語を教えている教師でもあります。日本の滞在経験もあり、日本語はペラペラ。僕は植物について詳しすぎたのか、全部知ってるね! なんて言われてしまいました・・・。

 

 

上記は何だと思いますか? ショウガ科の植物みたいですよね。これ、カルダモンなんです。

 

 

カルダモンがどのように開花し、実を結ぶのか、知らない方も多いはず。ショウガのようですが、花の咲き方は独特で、少し蘭に似た花が可愛らしく下の方で咲くのです。上記画像の上のものが花、下のものが緑の実です。それを乾燥させていろいろスパイスとして利用するんですよね。

 

 

熱帯で育つのはスパイスに限らず、バニラもそう。花の季節はもっと後で秋とのこと。その頃であれば可愛らしい蘭の花が見られるはずです。バニラは自然結実が難しいため、全て人の手で受粉していく手のかかる植物。

 

 

とても見たかった、撮影したかったのはこの画像です。何かわかりますか? 画像中央にあるのは乾燥していない生の状態のクローヴです。このクローヴ、その後はどうなると思いますか?

 

 

なんと、この茶色く太ったもの、これがクローヴの最終形なのだそうです。こんな実の形になって終わるなんて、どの精油関連の書籍にも書かれていないこと。こういう体験がたまらなく楽しいのです。クローヴの葉をちぎるときちんと葉からもオイゲノールが香っていました。

 

 

この葉は何? 少し丸く固い筋の入ったこの葉はシナモンです。

 

 

スリランカと南インドで栽培されているCinnamomum verumはシナモン、Cinnamomum cassiaはニッケイ、カッシアと呼ばれ成分が少し違います。シナモンの方が高価なため、カッシアも国内ではシナモンとして販売されていることが多いのですが、その形態がシナモンとは違うため、樹木による違いだとばかり思っていました。シナモンはスティックにした際、巻き方がふわふわで軽く、綺麗なスティックにならず壊れてしまいます。しかし、カッシアの方は巻が固く、触ったくらいでは折れません。シナモンスティックと言えばこのカッシアですよね。

 

 

右が国内でシナモンとして販売されているカッシア。葉はシナモンより細いので樹木を見ても違いがわかります。そしてシナモンは右。スティックにはなりづらいのです。

 

 

このように、薄い皮がくるくると丸まり、触っただけでほろほろと崩れてしまうのがシナモン。でも、これは品種だけの違いではなかったようです。なんと、表皮を入れるか入れないか、という違いなのだとか。

 

 

シナモンは表皮を削り取ってしまいます。その上で皮を剥ぐのです。

 

 

剥いた瞬間は綺麗なスティックになっていますが、これが乾燥して丸まっていくと壊れやすくなってしまうようで、綺麗にスティック状になったものは更に高価。壊れたものは一般流通したり、パウダーにしたりするんですね。かじってみると、シナモンより甘みが強いことがわかります。そのままで美味しい!! ですから、シナモンを購入される際は、Cinnamomum verumという学名をチェックすることと、ふわふわの巻のもの、壊れたものを選んでください。そちらの方が高品質ですから。固い表皮は香りが良くないそうですから。

 

 

シナモン同様にチェックをしたかったのはこの実です。ちょうど収穫のシーズンだったようで、樹木にはたくさんの実がなっていました。こちらはスパイスガーデンではなく、キャンディ郊外にあるRoyal Botanical Garden(植物園)のスパイスコーナーでのもの。何かわかりますか?

 

 

これこれこれ!!! これをこの目で見たかったのです。実際に見られるのがスリランカの醍醐味。果実が弾けて中から何やら赤いものが・・・

 

 

そう、これはナツメグとメースです。ナツメグを取り囲んでいる赤い表皮がメース。メースはナツメグよりも柔らかな風味のため、スパイスとしても使いやすく、香料としても人気なんですよ。精油もやはりナツメグより柔らかでレディースの香水にはメース、メンズにはナツメグを、という感覚。

メースというのは、実っているフレッシュな状態は真っ赤です。赤がとにかく鮮やかなんですよ。しかし、天日で乾燥させ、市販される頃になるとくすんだオレンジになってしまうのです。ですから、どうしても真っ赤なメースが見たかったのです。

 

 

どうですか? とっても綺麗な発色ですよね。僕は、シナモンとこのメースをキャンディ市内のスパイスショップ(いえ、店頭にはTea Storesの文字が・・・)で100gずつ購入してきました。意外にも結構な量があり、シナモンの欠片をコーヒーに入れて香りを楽しんでいます。

 

 

スリランカで見たかったナツメグ、メースとシナモンにすっかり心を奪われ、テンションマックスでしたが、他にもいろいろと見てきました。

 

 

こちらは言わずと知れたペッパー。こんなに実るんですね!! 熱帯の植物ですが、実は反日蔭を好むため、陽当たりが良いと生育しません。乾燥させたブラックペッパーや皮を剥いたホワイトペッパーはどこでも手に入るのですが、なかなかグリーンはありません。だって、フレッシュでなくてはならないのですから。マダガスカルで購入してきた塩漬けを大切に使っているのですが、ブラックほどパワフルではないそのピリピリ感が面白いんですよ。そんな話をしていたら、ガイドが1つ取ってくれました。

 

 

帰国後、グリーンからブラックへ変化していく様子も観察出来たわけです。うーん、楽しい♪

 

 

今回のインドでは、マイソール地方を外してしまったため、見ることはできませんでしたが、意外にもスリランカで出会ったのがSantalum album、そうサンダルウッドです。とても多くの近縁種がある中で、この学名のものが一番メジャーで、マイソールで栽培されているのもこの学名です。

精油が採取可能となる成木になるのに20〜40年かかる品種のため希少なのですが、スリランカには1869年に持ち込まれたそう。結構な大木ですもんね。精油の収油率は5〜7%で、インドやスリランカではアーユルヴェーダを初めとした医療にも薬として使用されています。

 

 

半寄生植物と言われていますが、どのように寄生しているのかはパッと見たくらいではわからないほど、普通の樹木です。

 

 

植物に明るい僕でも、これだけでは判断がつきません。

このサンダルウッド、アーユルヴェーダでは歯磨きに使用されるそうです。サンダルウッドパウダーにバニラエッセンスを加えて磨くそうなのですが、止血、口臭、歯石、虫歯などに効果があるのだとか。ホント?

 

 

他にも、樹木だけでは判断が出来ないのがこちら。エボニーウッド。

 

 

こちちも花がないとわかりづらいガイヤックウッド。初対面でした。

 

 

赤いパイナップル・・・。これは食用ではなくアーユルヴェーダに使用されるもの。

 

 

スパイス農園ではキングココナッツから作ったというお酒もありました。なんと果実ではなく、花から作るんですよ。花の付け根に傷を付け、そこから染み出てくる液体を1日置くと自然発酵してお酒になる、と。ライチっぽい酸味のとってもフルーティーなお酒でしたよ。これを煮詰めて甘味料も作るそうです。

 

 

スリランカの伝統的なカレースパイスの実演。上段左からアニスシード、クミン、カルダモン、カレーリーフ、下段右からコリアンダーシード、シナモン、クローヴ。意外にもカルダモンとクローヴは1つだけで、カレーリーフが多いことがわかります。この中には唐辛子が入っていないので、辛みはなくて風味だけです。だから、辛いものが苦手な方でも大丈夫だよ、というレシピ。

ちなみに、スパイスティーの場合は、カルダモン、ジンジャー、シナモン、コリアンダーシード、紅茶を全て各小さじ1杯入れ、お湯4カップを加えて蓋をし、3分待つ。そこにバニラエッセンスを4滴入れるという、とてもざっくりとしたレシピが紹介されていました。刺激的なスパイスなのに胃痛に効果があるのだそうです。ホント?

 

 

スリランカは様々な観光のポイントが存在しますが、香りに興味のある方、特に精油を取り扱っている皆さまは一度はこういった体験をしてみると、より楽しく学べるはず。料理の中にどのように取り入れているのかは、食べながら確認するもの。それもまた楽しみの1つですよね。今までよりもっともっと日常的にスパイスを楽しみたいと思うようになったスリランカでの体験でした。

(01/06/2015)

 

 

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